「それ」と「あれ」の境界線はどこ?距離と記憶で使い分ける日本語講座

「それ」と「あれ」の使い分け講座

佐藤先生
佐藤先生
ミライくん、今日は「言葉の距離感」について考えてみようか。
ミライくん
ミライくん
距離感ですか?なんだか難しそうですね。
佐藤先生
佐藤先生
そんなに構えなくて大丈夫だよ。例えば、ミライくんが目の前にある消しゴムを指すときは何て言う?
ミライくん
ミライくん
それは「これ」ですね。
佐藤先生
佐藤先生
正解。じゃあ、ちょっと離れたところにある先生の机の上のペンは?
ミライくん
ミライくん
それは「それ」です。
佐藤先生
佐藤先生
いい調子だ。じゃあ、窓の外に見える遠くのスカイツリーは?
ミライくん
ミライくん
あ、それは「あれ」って言います!
佐藤先生
佐藤先生
その通り。今、ミライくんは無意識に「これ・それ・あれ」を使い分けたよね。実はこの「それ」と「あれ」の使い分けには、はっきりとした境界線があるんだ。
ミライくん
ミライくん
境界線……。なんとなく遠いのが「あれ」で、近くないのが「それ」って感じがしますけど、具体的に何メートルからが「あれ」とか決まってるんですか?
佐藤先生
佐藤先生
実は、物理的な距離だけじゃないんだよ。日本語の「指示語」には、二つの大きなルールがあるんだ。一つは「場所のルール」、もう一つは「記憶のルール」だね。
ミライくん
ミライくん
二つもあるんですか。まずは「場所のルール」から教えてください!
佐藤先生
佐藤先生
いいよ。場所のルールでは、自分と相手の立ち位置が重要になるんだ。ミライくん、「それ」ってどんなときに使うと思う?
ミライくん
ミライくん
さっきのペンみたいに、自分からは少し離れているけど、先生の近くにあるものですかね。
佐藤先生
佐藤先生
大正解!「それ」の基本的な意味は、「自分の縄張り」の外にあって、「相手の縄張り」の中にあるものを指すんだ。
ミライくん
ミライくん
縄張り!かっこいいですね。
佐藤先生
佐藤先生
そうだろう。逆に「あれ」は、自分にとっても相手にとっても、二人ともから離れている「外側」にあるものを指すんだよ。つまり、自分の近くでもないし、相手の近くでもない、第三の場所にあるものが「あれ」になるんだ。
ミライくん
ミライくん
なるほど。自分と相手、どっちの近くでもない「共通の外側」が「あれ」の境界線なんですね。
佐藤先生
佐藤先生
その通り。でも、これだけだと説明がつかない場合があるんだ。例えば、二人で一緒にテレビを見ているとき、テレビに映っているタレントを指して「あれ、誰だっけ?」って言ったりするよね。
ミライくん
ミライくん
あ、確かに!テレビはすぐ目の前にあるのに「それ」じゃなくて「あれ」って言いますね。
佐藤先生
佐藤先生
ここで二つ目の「記憶のルール」が登場するんだ。ミライくん、今お互いに顔を知っている友達のAくんについて話すとしようか。
ミライくん
ミライくん
はい、Aくんですね。
佐藤先生
佐藤先生
ミライくんが「昨日、Aくんに会ったよ」と言ったとき、先生もAくんのことをよく知っていたら、先生は何て返すかな?
ミライくん
ミライくん
「あ、あれは元気だった?」……いや、言わないですね。「あ、あの人は元気だった?」かな。
佐藤先生
佐藤先生
そうだね。二人ともが共通して知っている情報について話すとき、日本語では「あ」のグループを使うんだ。これを「対照的知識」というんだけど、二人とも分かっていることは「あれ」「あの」「あのとき」と表現するんだよ。
ミライくん
ミライくん
へぇー!じゃあ、もし先生がAくんのことを知らなかったらどうなるんですか?
佐藤先生
佐藤先生
もし先生が「えっ、Aくんって誰?」という状態なら、ミライくんは「えっと、その人は僕の小学校からの友達で……」という風に、「そ」のグループを使うことになる。
ミライくん
ミライくん
あ!本当だ。「あ」じゃなくて「その人」になりました。
佐藤先生
佐藤先生
不思議だろう?相手が知らないことを自分だけが知っていて、それを説明しようとするときは、言葉の距離を少し縮めて「それ」を使うんだ。これを「文脈指示」と言うんだけど、自分だけが持っている情報を相手に手渡すようなイメージだね。
ミライくん
ミライくん
自分も相手も知っている「共通の思い出」は「あれ」。自分だけが知っていて相手に教えるときは「それ」。これが心の距離の境界線なんですね。
佐藤先生
佐藤先生
素晴らしいまとめだね、ミライくん。まとめると、物理的な場所の境界線は「相手の近くか、二人から遠いか」。そして知識や記憶の境界線は「二人とも知っているか、片方しか知らないか」ということになるんだ。
ミライくん
ミライくん
なんだか、相手のことをどれくらい知っているかで言葉が変わるって、ちょっと面白いですね。
佐藤先生
佐藤先生
そうだね。日本語は相手との関係性をとても大切にする言語なんだよ。この使い分けができるようになると、もっとスムーズに気持ちが伝わるようになるはずだよ。
ミライくん
ミライくん
境界線、しっかり見えました!先生、ありがとうございました!

今回の学習のまとめ

「それ」と「あれ」の使い分けには、以下の二つの基準による境界線が存在します。

1.場所による使い分け(現場指示)
自分と相手が立っている場所を中心にして、物理的な範囲で区別します。
「それ」:相手の近くにあるもの、または相手の領域に属するものを指します。
「あれ」:自分からも相手からも離れた場所にあるもの、共通の外側にあるものを指します。

2.知識や記憶による使い分け(文脈指示)
話し手と聞き手が、その話題についてどれくらい知っているかで区別します。
「それ」:話し手だけが知っていることを、聞き手に伝えるときに使います。相手にとっては未知の情報であるため、少し手元に引き寄せた表現になります。
「あれ」:話し手と聞き手の両方がよく知っている共通の話題について使います。二人で一緒に「あの時のこと」を思い出すような、共有された記憶を指します。

結論として、相手の近くにあるものや自分だけが知っている話題を指すときは「それ」を使い、二人から離れた場所にあるものや二人ともよく知っている共通の話題を指すときは「あれ」を使うのが、正しい使い分けの境界線です。

確認テスト

Q1. 友達の持っているノートを指して言うなら?

Q2. 二人ともよく知っている去年の修学旅行の話題なら?

Q3. 自分だけが知っている面白い映画を友達に教えるときは?

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