佐藤先生
「ミライくん、こんにちは。今日の理科の時間は『金属の熱伝導』というテーマについて、いっしょに楽しく考えていきましょう。熱伝導って言葉、なんだか難しそうに聞こえるかもしれないけれど、実は私たちの身の回りで毎日起きているおもしろい現象なんだよ」
ミライくん
「佐藤先生、こんにちは。熱伝導、ですか。確かにちょっと難しそうな漢字が並んでいますね。熱が伝わること、みたいな意味でしょうか。なんとなくイメージはできるような、できないような気がします」
佐藤先生
「その通り、まさに熱が伝わることだよ。素晴らしい勘をしているね。物の中を熱が移動していく現象のことを、理科では熱伝導と呼ぶんだ。これをもっと分かりやすくするために、まずはミライくんの日常生活の中にある経験から思い出してみよう。冬の寒い日に、外にあるプラスチックのベンチと、鉄でできた公園の鉄棒を触るとしたら、どちらが冷たく感じるかな」
ミライくん
「それは絶対に鉄棒です。冬の鉄棒って、氷みたいにキンキンに冷えていて、触るだけでも手が凍りそうになりますよね。プラスチックのベンチも冷たいけれど、鉄棒ほどじゃない気がします」
佐藤先生
「そうだよね。鉄棒を触ると、ハッとするくらい冷たく感じる。じゃあ、今度は逆のパターンを考えてみよう。お母さんがお家で料理をするときに使うフライパンや鍋を思い浮かべてごらん。フライパンの本体は金属でできているけれど、手で持つ取っ手の部分はどんな材料でできているかな」
ミライくん
「ええっ、鉄棒の方が冷たく感じるんだから、鉄棒の方が温度が低いに決まっています。鉄棒はマイナスくらいになっていて、プラスチックはそこまで下がっていないんじゃないですか」
佐藤先生
「実はね、温度計でちゃんと測ってみると、プラスチックのベンチも鉄棒も、まったく同じ温度んだよ。例えば外の気温が5度だったら、どちらも同じ5度んだ」
ミライくん
「ええ。そんなわけないですよ。だって触ったときの冷たさが全然違いますよ。同じ温度なのに、なんで鉄棒の方が圧倒的に冷たく感じるんですか」
佐藤先生
「ここがまさに、今日のテーマである熱伝導の最大の秘密なんだ。同じ温度なのに鉄棒が冷たく感じるのは、鉄棒の温度が低いからではなくて、ミライくんの手の熱が、鉄棒にものすごいスピードで奪われているからなんだよ」
ミライくん
「僕の手の熱が奪われている。どういうことですか」
佐藤先生
「熱というものにはね、高いところから低いところへ移動するという絶対的なルールがあるんだ。ミライくんの体温は36度くらいあるよね。それに対して、冬の鉄棒は5度だ。36度の手で5度の鉄棒に触ると、熱はどちらからどちらへ動くかな」
ミライくん
「高い方から低い方だから、僕の手から鉄棒に向かって熱が逃げていくことになりますね」
佐藤先生
「その通り。そのときに、鉄という金属は、熱を伝えるスピードがものすごく速いんだ。手が鉄棒に触れた瞬間、手のひらの熱がドバドバと鉄棒の奥の方へ吸い込まれるように逃げていってしまう。私たちの脳は、手の皮膚から熱が急激に奪われたときに、冷たいと感じる仕組みになっているんだよ。一方で、プラスチックは熱を伝えるスピードがとても遅い。だから触っても、手の熱があまり逃げていかないんだ。だからそこまで冷たく感じないんだよ」
ミライくん
「なるほど。鉄棒が冷たいんじゃなくて、僕の手の熱が超ハイスピードで逃げていくから、脳が冷たっ。ってびっくりしているんですね。その熱が伝わるスピードの速さのことを、熱の伝導がいい、と言うんですか」
佐藤先生
「その通り。金属は熱を非常に伝えやすい性質を持っていて、これを熱伝導性が高い、と言うんだ。じゃあ、今度は逆のパターンを考えてみよう。お母さんがお家で料理をするときに使うフライパンや鍋を思い浮かべてごらん。フライパンの本体は金属でできているけれど、手で持つ取っ手の部分はどんな材料でできているかな」
ミライくん
「ええと、黒いプラスチックみたいなものか、木でできていることが多い気がします。全部金属にしちゃえば簡単なのに、なんでわざわざ違う材料を使っているんだろう」
佐藤先生
「もしフライパンの取っ手まで全部金属で作って、それを火にかけたら、料理をしている人はどうなると思う」
ミライくん
「あ、熱くて持てなくなっちゃいますね。火が当たっているのは下の丸い部分だけなのに、取っ手まで熱くなっちゃうんだ」
佐藤先生
「そうなんだよ。火の熱が金属の本体を伝わって、取っ手の先まであっという間に移動してきちゃうんだね。だから、熱を伝えにくいプラスチックや木を取っ手に使うことで、人間が安全に持てるように工夫されているんだ。逆に、料理をのせる本体部分は、火の熱をすぐに食材に伝えたいから、熱伝導のいい金属で作る必要があるんだよ」
ミライくん
「そうか。もしフライパンが全部プラスチックだったら、火の熱が全然お肉に伝わらないし、そもそも溶けちゃいますもんね。金属の熱が伝わりやすい性質を、私たちは上手に利用して料理をしているんだな」
佐藤先生
「素晴らしいに気づきだね。私たちの暮らしは、金属の熱伝導に支えられているんだ。ここで、さらに一歩進んだおもしろい話をしよう。ひとくちに金属と言っても、世の中にはたくさんの種類の金属があるよね。鉄、銅、アルミニウム、金、銀。ミライくんは、どの金属が一番熱を伝えやすいと思う」
ミライくん
「うーん、なんとなく、一番硬くて強そうな鉄ですか。さっきの鉄棒のイメージが強いですし」
佐藤先生
「鉄はすごく冷たく感じるから、一番早そうな気がするよね。でも実は、金属の種類によって熱を伝えるスピードには大きなランキングがあるんだ。結論から言うと、一番熱を伝えやすいのは銀なんだよ。その次が銅で、三番目がアルミニウム。ミライくんが予想してくれた鉄は、実はこの中ではかなり下の方なんだ」
ミライくん
「ええっ。鉄はそんなに上じゃないんですか。銀がトップで、次が銅で、その次がアルミ。なんだかオリンピックのメダルみたいな順番ですね。金メダル、銀メダル、銅メダル。あ、でも金はどこに入っているんですか」
佐藤先生
「いいところに目をつけたね。金はね、銀と銅の間、つまり二番目くらいに熱を伝えやすいんだ。だから順番で言うと、銀、銅、金、アルミニウム、鉄という感じになる。でも、金や銀はものすごく値段が高いよね。もし、学校の鉄棒を全部銀で作ったり、お家のフライパンを全部銀で作ったらどうなるかな」
ミライくん
「お金がかかりすぎて、大変なことになりますね。泥棒に盗まれちゃうかもしれないです」
佐藤先生
「その通り。だから、値段が高すぎる銀や金は、普段使う道具にはあまり使われないんだ。その代わりに大活躍しているのが、二番目の銅や、四番目のアルミニウムなんだよ。例えば、パソコンやスマートフォンの中には、頭脳となる半導体という部品が入っていて、使っているとものすごく熱くなるんだ。その熱をすばやく逃がすための部品には、熱伝導がよくて銀よりも安い銅やアルミニウムがたっぷり使われているんだよ」
ミライくん
「そうんだ。スマホが熱くなるのを防ぐためにも、熱伝導のランキングが役に立っているんですね。銀、銅、アルミの順番、テストに出そうだから覚えておきます」
佐藤先生
「ぜひ覚えておいてね。特に銀、銅、アルミニウムのトップ3は理科の試験でも本当によく狙われるポイントなんだ。さて、ここでミライくんに、もう一つ深く考えてほしいことがある。どうして金属は、プラスチックや木に比べて、こんなにも熱を伝えるのが得意なんだろう。その理由を考えたことはあるかい」
ミライくん
「うーん、なんとなく、一番硬くて強そうな鉄ですか。さっきの鉄棒のイメージが強いですし」
佐藤先生
「確かに金属はズッシリしていて詰まっている感じがするよね。それは良い着眼点だ。でも、本当の理由は、金属の中を自由に動き回ることができる、ものすごく小さな粒の存在にあるんだ。その粒の名前を『自由電子』と言うんだよ」
ミライくん
「じゆうでんし。自由な電子、ですか。なんだか楽しそうな名前ですね」
佐藤先生
「名前の通り、すごく自由に動き回っているんだ。すべての物質は、ものすごく小さな原子という粒が集まってできている。プラスチックや木の中にある粒たちは、お互いにしっかり手をつないでいて、その場所から動くことができない。だから、端っこの方に熱が加わって粒が激しく震え始めても、その震えが隣に伝わるまでに時間がかかるんだ」
ミライくん
「熱が伝わるっていうのは、粒が震えることなんですか」
佐藤先生
「そうなんだ。理科の世界では、熱の正体は粒の震え、つまり運動エネルギーなんだよ。温度が高いということは、中の粒たちが激しくブルブル震えている状態なんだ。プラスチックは、隣の粒にブルブルを順番に伝えるだけだから遅い。でも金属の中には、粒と粒の間をものすごいスピードでビュンビュン飛び回ることができる自由電子というお留守番のいない子供のような粒がたくさんいるんだ。金属の端っこを温めると、そこにいた自由電子が熱をもらって激しく動き出し、あっという間に反対側の端っこまで飛んでいって、熱のブルブルを届けてしまうんだよ」
ミライくん
「なるほど。自由電子という足の速い配達員が、金属の中を走り回って熱を届けているから、金属は熱伝導がめちゃくちゃ速いんですね。プラスチックにはその配達員がいないから、隣の人に手渡しで荷物を送るみたいに遅くなっちゃうんだ」
佐藤先生
「その例え、最高に分かりやすいね。まさにその通り。自由電子という超優秀な配達員がいるおかげで、金属は熱を伝えるのが得意なんだ。そしてね、この自由電子は、熱だけじゃなくて『電気』を運ぶのも大得意なんだよ」
ミライくん
「あ。電気を通すのも金属の特徴ですよね。コンセントの電線の中身も銅線が入っています」
佐藤先生
「つながったね。金属が電気をよく通す理由と、熱をよく伝える理由は、どちらも自由電子が中にいるから、という同じ原因なんだ。だから、熱を伝えやすい金属のランキングは、そのまま電気を通しやすい金属のランキングと同じになるんだよ。一番電気を通すのは銀、次が銅。だから電線には銅が使われているんだ」
ミライくん
「すごい。理科の決まりって、別々に覚えるんじゃなくて、自由電子っていう一つの理由で全部つながっているんですね。これなら丸暗記しなくても忘れなそうです」
佐藤先生
「そう言ってもらえると、先生も本当にうれしいよ。バラバラに見える現象の裏にある、たった一つの共通のルールを見つけることこそが、理科を学ぶ一番の楽しさなんだからね。じゃあ、ここで実験のときによく出るお話をしよう。一本の長い金属の棒の端っこをガスバーナーで温めるとするよね。このとき、熱はどのように伝わっていくと思うかな」
ミライくん
「うーん、バーナーが当たっているところが一番熱くなって、そこからだんだん遠くの方に向かって熱が広がっていくような気がします」
佐藤先生
「その通り。温めた場所から、じわじわと遠い方へと熱が伝わっていく。これを調べるために、金属の棒に一定の間隔でロウソクのロウを塗っておく実験があるんだ。端っこを温めると、バーナーに近い方のロウから順番に溶けていく。この実験から、熱は温められた部分から、隣へ、隣へと順番に、放射状に伝わっていくということが分かるんだよ。決して、いきなり遠くの場所が熱くなることはないんだ」
ミライくん
「確かに、配達員が走っていくとしても、まずは近いところから順番に通っていきますもんね。近いロウから順番に溶けるっていうのは、すごく納得がいきます」
佐藤先生
「そうだね。じゃあ、これが棒じゃなくて、平らな金属の板だったらどうなるだろう。四角い金属の板の、真ん中をバーナーで温めたら、熱はどう広がっていくかな」
ミライくん
「真ん中からスタートするから、そこから丸く、円を描くように周りに広がっていくんじゃないですか」
佐藤先生
「大正解。真ん中を中心にして、綺麗な円を描くように全体に熱が広がっていくんだ。これもロウや、温まると色が変わる特別なインクを塗っておくと、真ん中から円形に色が変わっていくのがよく見えるんだよ。じゃあ、今度は応用問題だ。四角い金属の板の、真ん中じゃなくて、どこか一つの角っぽ、端っこの方を温めたらどうなる」
ミライくん
「端っこからスタートするから、そこから扇形みたいに、広がるように熱が伝わっていく気がします」
佐藤先生
「素晴らしい。完璧な想像力だよ。熱は常に、温められた出発点から、すべての方向に向かって均等に伝わろうとするんだ。障害物がない限り、同じスピードで四方八方に広がっていく。これが熱伝導の基本的なルールなんだよ」
ミライくん
「棒のときは一方向だけど、板のときは全体に広がっていくんですね。でも、どっちも温めたところから順番にっていうルールは変わらないんだな」
佐藤先生
「その通り。ルールはいつでもシンプルなんだ。ここまでの話を一度整理してみよう。金属の熱伝導について、大切なポイントがいくつかあったけれど、ミライくん、自分の言葉でまとめてもらえるかな」
ミライくん
「はい。やってみます。
まず、熱伝導っていうのは、物の中を熱が伝わっていく現象のこと。
金属は、中に自由電子っていう自由に動き回れる小さな粒がいるから、熱を伝えるのがものすごく得意で、熱伝導性が高い。
金属の種類によって熱の伝わりやすさにランキングがあって、一番が銀、二番目が銅、三番目がアルミニウム。これは電気の通しやすさと同じランキング。
そして、金属を温めると、温めた場所から近い順番に、四方八方へ熱が伝わっていく。
これであっていますか」
佐藤先生
「素晴らしいよ、ミライくん。完璧に要点を押さえているね。これだけしっかり理解できていれば、テストでどんな聞かれ方をしても、絶対に正解できるよ。同じ温度なのに鉄棒が冷たく感じる理由も、もうバッチリ説明できるね」
ミライくん
「はい。鉄棒の温度が低いんじゃなくて、僕の手の熱が、熱伝導の得意な鉄棒に超スピードで奪われちゃうから冷たく感じるんだ、って友達にも教えてあげます」
佐藤先生
「それは素晴らしいね。人に説明できるようになると、自分の知識がさらに本物になるからね。では、今日勉強した内容を、いつでもパッと見直して思い出せるように、最後に結論として美しくまとめておこう」