ミライくん
また大変なことが起きました。古文の授業で「る」っていう助動詞が出てきたんですけど、もう頭の中がパニックです。ただの「る」っていう一文字なのに、先生が「受身、可能、自発、尊敬の4つの意味がある」とか言い出して、どれがどれだかさっぱり見分けられないんです。一文字にそんなにたくさんの意味を詰め込まないでほしいですよ。
佐藤先生
おや、ミライくん。今度は助動詞の「る」に苦戦しているんだね。でも、その気持ちはすごくよく分かるよ。現代の僕たちが使っている日本語でも、「食べられる」とか「見られる」みたいに「れる・られる」って普段からよく使っているよね。実は、古文の「る」は、今の僕たちが使っている「れる」の直接のご先祖様んだ。だから、意味の種類が多いのも、僕たちが普段無意識に使っている感覚と同じんだよ。難しく考えずに、まずはその4つの意味がどんなものか、一つずつゲームのキャラクターみたいに整理していこう。
ミライくん
僕たちが使っている「れる」のご先祖様なんですか。それなら、少しは親しみを持てるかもしれないです。でも、その4つの意味をどうやって見分ければいいのか、そこが一番知りたいんです。
佐藤先生
そうだよね。テストでも「この『る』の意味を答えなさい」という問題が本当によく出る。見分けるためには、それぞれの意味がどんな時に使われるか、その特徴をつかむのが一番の近道んだ。まずは1つ目の「受身」からいってみよう。これは現代語の「〜される」と全く同じ意味だよ。誰かに何かをされる、という状況の時に使うんだ。例えば、「犬に噛まれる」とか「友達に怒られる」みたいなことだね。
ミライくん
あ、それは分かります。自分から進んでやったことじゃなくて、誰か他の人から何かをされちゃうっていうことですよね。
佐藤先生
その通り。古文の文章の中で「受身」を見分けるための超強力なヒントがあるんだ。それは、文章の中に「〜に」という言葉があるかどうか、なんだよ。さっきの例でも「犬に」とか「友達に」って言ったよね。古文でも、「誰々におそわれる」とか「何々に言われる」という風に、行動をしてきた相手を表す「〜に」という言葉がセットで出てくることが多いんだ。だから、文章を読んでいて「る」の近くに「〜に」を見つけたら、「よし、これは受身の可能性がめちゃくちゃ高いぞ」と予想できるんだよ。
ミライくん
なるほど。行動の犯人を示す「〜に」があるかどうかが、受身を見分ける目印になるんですね。
佐藤先生
そういうこと。じゃあ、2つ目の「可能」にいってみよう。これは現代語の「〜できる」という意味だね。「英語が話せる」とか「壁を乗り越えられる」みたいに、能力的にそれが可能だと言いたい時に使うんだ。ただ、古文の「る」が「可能」の意味になる時は、現代語とは違って、ちょっとした制限があるんだよ。
ミライくん
制限ですか。どんな制限なんですか。
佐藤先生
古文の「る」が「できる」という意味になる時は、ほとんどの場合、すぐ下に「ず」とか「なし」といった、否定を表す言葉がセットでくっついてくるんだ。つまり、「〜することができない」という、できない形の時にしか「る」は「可能」の意味で使われないことが多いんだよ。だから、文章の中で「る」のすぐ下に「ず(〜ない)」を見つけたら、「あ、これは『〜することができない』っていう可能の否定だな」って見抜くことができるんだ。
ミライくん
へえ。じゃあ、「る」単体で「できる!」ってポジティブに言っている時は、可能じゃないことが多いんですか。
佐藤先生
その通り。古文で「〜できる」と肯定で言う時は、別の言葉を使うことが多いんだ。だから、「る」が「可能」になるのは、ほぼ「下に打ち消しの言葉(ず)がある時」と覚えておいてね。これが2つ目のコンボ技だ。
ミライくん
下に「ず」があったら可能。よし、これも頭に入りました。じゃあ、3つ目の「自発」って何ですか。言葉の意味からして、自分で何かを発明するみたいなことですか。
佐藤先生
自発っていう言葉は、ちょっと聞き慣れないよね。これはね、「心の中で、自然とそういう気持ちになってしまう」という意味んだ。自分で無理にそう思おうとしているわけじゃないのに、あるきっかけがあると、自然とその感情が湧き上がってきちゃう、っていう状態を表すんだよ。
ミライくん
自然と気持ちが湧き上がってくる。うーん、具体的にはどんな感じなんですか。
佐藤先生
例えばね、ミライくんがおじいちゃんの家に行った時に、昔の家族写真を見たとしよう。そうすると、おじいちゃんとの楽しかった思い出が、思い出そうと頑張らなくても、フワッと頭に浮かんできたりしないかい。
ミライくん
あ、あります。写真を見ただけで、なんか懐かしいなあっていう気持ちが勝手に湧いてきます。
佐藤先生
まさにそれが「自発」なんだよ。古文では、こういう時に「思い出される」とか「涙がこぼれる」といった表現に「る」を使うんだ。そして、この自発を見分けるための目印は、ずばり「心の動きを表す言葉」がすぐ上にあるかどうか、なんだ。
例えば、「思う(思う)」「偲ぶ(懐かしむ)」「泣く(泣く)」「眺む(ぼんやり見る)」といった、心や感情に関係する言葉の下に「る」がくっついていたら、それはほぼ100パーセント「自発」の意味になるんだよ。
ミライくん
なるほど。心が勝手に動いちゃうような言葉、例えば「思う」とか「思い出す」の下に「る」がいたら、それは「自然と思っちゃう」っていう自発になるんですね。これは言葉のセットで覚えたら、すごく簡単に見分けられそうです。
佐藤先生
そうなんだよ。古文のルールは、こうやってセットになる言葉が決まっているから、パズルみたいに当てはめていけば怖くないんだ。
では、最後の4つ目、「尊敬」にいってみよう。これは現代語の「〜なさる」とか「お〜になる」という意味で、身分の高い人や、尊敬すべき人を高めるために使う言葉だね。学校の先生や、古文の世界なら帝(天皇)や貴族が何か行動をした時に使うんだ。
ミライくん
尊敬ですか。実績のある身分の高い人が出てきたら全部尊敬になっちゃうんですか。それだと見分けるのが難しそうです。
佐藤先生
確かに、登場人物の身分を全部把握するのは大変だよね。だから、ここでも形に注目するんだ。
「る」が「尊敬」の意味になる時はね、その上の言葉が身分の高い人の行動であることはもちろんだけど、一番分かりやすいのは「主語が偉い人である」ということなんだ。文章の主語が「帝」とか「中宮(后)」とか、とにかく偉い人で、その人が何かアクションを起こした時に「る」が付いていたら尊敬だと判断する。
逆に、主語が普通の一般人や、僕たちのような一般の生徒だったら、絶対に尊敬にはならないんだよ。なぜなら、自分や普通の仲間に対して尊敬の言葉は使わないからね。
ミライくん
確かに、自分の行動に「佐藤先生が、お食事をお食べになられた」とは言っても、「僕が、ご飯をお食べになられた」とは言わないですもんね。主語が誰なのか、偉い人なのかどうかを見ることが大切なんだ。
佐藤先生
大正解。主語が誰なのかを意識することは、古文を読む上で一番大切なことなんだよ。
これで4つの意味の基本と見分け方の目印が出揃ったね。
受身は「〜に」がある。可能は下に「ず」などの否定がある。自発は上に「思う」などの心を表す言葉がある。尊敬は主語が偉い人。
どうだい、こうやって整理すると、ただの一文字の「る」が、周りの言葉によって全然違う役割の合図を出しているのが見えてこないかい。
ミライくん
はい。あんなに意味不明だった4つの区別が、周りの言葉を見るだけで一発で分かりそうな気がしてきました。でも先生、古文のテストって、これだけで終わりじゃないですよね。何かまた、みんなが引っかかるような罠があるんじゃないですか。
佐藤先生
さすがミライくん、勘が鋭くなってきたね。その通り、テストを作る先生たちが、みんなを試すために用意しているひっかけポイントが2つあるんだ。これを伝授するから、しっかりメモしておいてね。
ミライくん
やっぱりあった。教えてください、心の準備はできています。
佐藤先生
まず1つ目のひっかけは、「る」の仲間である「らる」という言葉の存在なんだ。実は、この助動詞は「る」と「らる」の2つの形があって、意味は4つとも全く同じなんだよ。受身、可能、自発、尊敬の4つね。じゃあ、何が違うかというと、上にくっつく言葉の種類によって、「る」が来るか「らる」が来るかが決まるんだ。
ミライくん
形が変わるだけで、意味は同じなんですか。じゃあ、どうして使い分けるんですか。
佐藤先生
これはね、上の言葉の「音(おと)」の問題んだ。
古文の動詞には、終わりの音が「アの音」で終わるグループがあるんだ。例えば、「書かない」の「書か(k-a)」とか、「咲かない」の「咲か(k-a)」みたいな形だね。このように、上の言葉が「アの音」で終わる動詞の時は、下に「る」がくっつくんだ。
一方で、それ以外の音、例えば「イの音」や「ウの音」で終わる言葉の時は、下に「らる」がくっつく、というルールがあるんだよ。
テストでは、「空欄に『る』か『らる』のどちらかを正しい形に変えて入れなさい」という問題が出る。その時は、空欄のすぐ上の言葉を声に出して読んでみて、最後の音が「ア」なら「る」、「ア」以外なら「らる」を選ぶ、と覚えておけば百発百中だよ。
ミライくん
アの音なら「る」、それ以外なら「らる」。これは口で唱えてみればすぐに分かりそうですね。「書かる」とか「食べらる」みたいな感じかな。
佐藤先生
その通り。自分の口でなじませるのが一番の近道だね。
そして、2つ目のひっかけポイント。これが本当に多くの人が間違える最大の罠なんだ。
それはね、「る」という文字が文章の中に出てきたからといって、すべてが今話した助動詞の「る」とは限らない、ということなんだよ。
ミライくん
ええっ。どういうことですか。「る」って書いてあるのに、助動詞の「る」じゃないものがあるんですか。
佐藤先生
あるんだな、これが。例えば、普通の動詞の体の一部として、もともと「る」という文字が含まれている言葉があるんだ。
一番有名なのが「なる(成る)」とか「おる(居る)」とか「知る(知る)」といった動詞だね。この動詞が文章の最後に来て「〜なる。」となった時、その最後の「る」だけを引っ張り出して、「あ、ここに『る』があるから受身だ」なんてやってしまうと、大バツをもらってしまうんだ。それはただの動詞の体の一部であって、助動詞の「る」じゃないからね。
ミライくん
うわあ、それは騙されそうです。文字の見た目だけに騙されちゃダメなんですね。じゃあ、それを見分けるにはどうしたらいいんですか。
佐藤先生
見分けるコツはね、その「る」の上の部分を指で隠してみるんだ。
もし、それが助動詞の「る」なら、上の部分だけでもちゃんと一つの動詞として成り立っているはずなんだよ。例えば、「書かる」の「る」を隠したら、「書か」が残るよね。これは「書く」という動詞の変化した形だから、意味が通じる。
でも、「なる」の「る」を隠したら、「な」しか残らない。これじゃあ何のことだか分からないよね。このように、上の言葉を孤立させてみて、ちゃんと動詞として存在しているかを確認すれば、それが助動詞なのか、それとも動詞の一部なのかを簡単に見破ることができるんだ。
ミライくん
なるほど。上の言葉をチェックして、ちゃんと動詞が隠れているかどうかを見る。これなら、ただの動詞の「る」に騙されずに済みますね。
佐藤先生
素晴らしい。これでミライくんは、助動詞「る・らる」の4つの意味の完璧な見分け方と、テストで出題される2大ひっかけポイントまで全部マスターしたことになるよ。
どうだい、最初は呪文のようだった古文の「る」も、こうやって周りの言葉を観察する探偵の目を持てば、すんなり解き明かせるパズルに見えてきただろう。
ミライくん
はい。周りのヒントを探せばいいんだって分かったら、なんだかゲームの謎解きをやっているみたいで面白くなってきました。
佐藤先生
その調子だよ。古文は暗記も大事だけど、こうやって仕組みを理解して、ヒントを見つける力をつければ、どんな問題が来ても怖くなくなるからね。これからの授業でも、ぜひこの探偵の目で「る」を見つけてみてね。
ミライくん
はい。次の古文の時間が来たら、さっそく「〜に」とか「ず」が転がっていないか、黒板をしっかり凝視してみます。佐藤先生、今日も分かりやすく教えてくれてありがとうございました。
これまでの説明をすべて整理すると、古文の助動詞「る・らる」に関する結論は次のようになります。
まず、古文の助動詞「る」および「らる」には、現代語の「れる・られる」の元となった「受身」「可能」「自発」「尊敬」という4つの異なる意味が存在します。文章の中でどの意味で使われているかを見分けるためには、その「る・らる」の周囲にある言葉や、文章の主語に注目することが最も重要です。
4つの意味の具体的な見分け方と目印の組み合わせは、以下の通りです。
1つ目の「受身」は、現代語の「〜される」という意味で、文章の中に「〜に」という行動の主体(犯人)を表す言葉がセットで存在することが最大の目印になります。
2つ目の「可能」は、現代語の「〜できる」という意味ですが、古文においては原則として下に「ず」や「なし」といった否定(打ち消し)の言葉を伴い、「〜することができない」という形で使われる性質があります。
3つ目の「自発」は、「自然とその気持ちになってしまう」という意味で、すぐ上に「思う」「偲ぶ」「泣く」といった、心や感情の動きを表す言葉がくっついている場合にこの意味になります。
4つ目の「尊敬」は、身分の高い人の行動を高める「〜なさる」という意味で、文章の主語が「帝」や「貴族」などの偉い人である場合に限られます。自分や一般的な登場人物が主語の場合は絶対に尊敬にはなりません。
さらに、テストで間違えやすい応用的な注意点が2つあります。
1つは、「る」と「らる」の使い分けです。これらは意味は全く同じですが、すぐ上の言葉の最後の音が「アの音」であれば「る」を繋ぎ、「アの音以外(イやウの音など)」であれば「らる」を繋ぐという音のルールがあります。
もう1つは、動詞の一部との見分け方です。「なる」や「知る」といった普通の動詞の末尾にある「る」を助動詞と勘違いしないよう、「る」の上の言葉が独立した動詞として成り立っているかを確認する必要があります。
結論として、助動詞の「る・らる」は、「受身=〜に」「可能=下に『ず』」「自発=上に心を表す言葉」「尊敬=主語が偉い人」という4つの明確な周辺ヒントをパズルのように見つけ出すことで、確実にその意味を見分けることができる重要な文法ルールなのです。