【古文文法】助動詞「なり」の見分け方公式!断定・推定をカンタンに見抜く接続のコツ
日本の伝統的な住居には、ふすまや障子という独特の仕切りがあります。外の光を優しく取り込みながら、部屋と部屋を緩やかにつなぐ知恵です。実は、古典の世界で使われていた言葉の中にも、これと同じように、前後の言葉を優しくつないだり、状況を柔らかく伝えたりする役割を持った言葉があります。それが、今回勉強する助動詞の「なり」です。
少し難しそうに聞こえるかもしれませんが、現代の私たちが使っている「〜だ」や「〜らしい」のルーツを探る旅だと思えば、きっと楽しくなってきますよ。それでは、佐藤先生とミライくんの会話をのぞいてみましょう。
目次
💡 佐藤先生とミライくんの「なり」攻略作戦
「先生、こんにちは。今日の古典の授業で『なり』っていう言葉がたくさん出てきたんですけど、辞書を見たら意味がいくつもあって頭がこんがらがっちゃいました。どうやって見分ければいいんですか」
「ミライくん、こんにちは。確かに『なり』は古文の助動詞の中でも、特につまずきやすいポイントの一つだね。でもね、基本をしっかり押さえれば、パズルみたいにすっきり解けるようになるよ。まず、ミライくんは『なり』にどんな意味があるか覚えているかな」
「ええと、確か『断定』の『〜だ』と、あと『推定』の『〜のようだ』とか、そんな感じだった気がします。でも、文の中でどっちの意味なのかが全然わからなくて」
「素晴らしい、よく覚えているね。実は『なり』には、大きく分けて二つの大物グループがあるんだ。一つは、今言ってくれた『断定』のグループ。もう一つは『伝聞・推定』のグループだよ。この二つを見分けるための、とっておきの秘密の鍵があるんだ。知りたいかい」
「はい。ぜひ教えてください。それがあれば、テストで迷わずに済みそうです」
「その鍵とはね、『なり』のすぐ上にある言葉、つまり『接続』んだ。古文の助動詞を攻略するときは、その言葉自身の意味を覚えるのと同じくらい、上の言葉がどんな形になっているかが重要んだよ。まずは、一つ目のグループである『断定』の『なり』から一緒に見ていこう」
「上の言葉の形ですか。あんまり意識したことがなかったです」
「じゃあ、簡単な例を出してみね。現代語で『私は学生だ』と言うときの『だ』が、古文の断定の『なり』にあたるんだ。古文風に言うと『私は学生なり』となる。このとき、『なり』の上にある『学生』という言葉は、名詞だよね。古文の世界では、名詞のことを『体言』と呼ぶんだ。そしてもう一つ、動詞や形容詞の『連体形』という形の下にも、この断定の『なり』はくっつくんだよ」
「体言と連体形ですね。連体形って、確か『とき』とか『こと』に繋がるときの形でしたっけ」
「その通り。よく覚えているね。例えば、動詞の『書く』なら、現代語でも『書くとき』と言うように、連体形は『書く』のままだね。古文でも同じように、連体形の下に『なり』がつくと『書くなり』となって、『書くのだ』とか『書くのである』という意味になるんだ。つまり、体言や連体形という『カチッとした名詞の性質を持つ言葉』の下につく『なり』は、物の正体をはっきり決める『断定』の意味になるんだよ」
「なるほど。体言や連体形の下にある『なり』は『〜だ』って訳せばいいんですね。それなら僕にも見分けられそうです」
「そうだね。まずはそこを基準にしよう。ちなみに、この断定の『なり』には、もう一つ『存在』っていう親戚みたいな意味もあるんだ。『〜にある』とか『〜にいる』と訳すんだけど、これも体言の下につくから、基本は同じグループだと考えて大丈夫だよ。例えば『山なり』と言ったら『山にある』という意味になることがあるんだ」
「存在ですか。場所を表す言葉の下につくときは『〜にある』って訳した方が自然になるんですね」
「素晴らしい。ミライくんは飲み込みが早いね。じゃあ、今度はもう一つの大物グループ、『伝聞・推定』の『なり』に進んでみよう。こっちの『なり』は、上の言葉がさっきとは違う形になるんだ。何形だと思う」
「うーん、連体形じゃないとしたら、終止形ですか」
「大正解。言い切りの形である『終止形』の下につくんだよ。ただし、ここで一つだけ大きな罠があるんだ。古文には『ラ変型』と呼ばれる特別な変化をする動詞や助動詞があるんだけど、その仲間が上に来るときだけは、終止形ではなくて『連体形』につくんだ。これはちょっとした例外として頭の片隅に置いておいてね。基本は『終止形』につくと覚えよう」
「終止形につくのが『伝聞・推定』の『なり』なんですね。ところで、伝聞と推定って、それぞれどういう意味なんですか」
「良い質問だね。まず『伝聞』は、文字通り『人から伝えて聞いたこと』を表すんだ。現代語に直すときは『〜ということだ』とか『〜そうだ』と訳すよ。誰かが言っていた噂話を伝えるようなイメージだね。そして『推定』は、今ある状況や、特に『音や声』をヒントにして、自分で『〜のようだ』と推測することんだ」
「音や声をヒントにするんですか。なんだか探偵みたいですね」
「まさに探偵の推理だよ。例えば、隣の部屋から楽しそうな話し声や笑い声が聞こえてきたとする。姿は見えないけれど、ミライくんならどう思うかな」
「あ、隣の部屋で誰かがパーティーでもしているのかな、って思います」
「そうだよね。その『声や音を根拠にして、〜のようだ、〜らしいと推量する』のが、推定の『なり』なんだ。だから、この推定の『なり』は『耳で聞いた情報をもとにした推理』という意味で、『聴覚的推定』なんて呼ばれることもあるんだよ。古文の文章で、鳥の鳴き声や、楽器の音、風の音の後に『なり』が出てきたら、この推定の意味であることがとても多いんだ」
「なるほど。耳から入ってきた情報で推理しているときは『〜のようだ』。人から聞いた噂話なら『〜ということだ』なんですね。でも先生、これってどっちの意味なのか迷っちゃいませんか」
「確かに、文脈だけで伝聞か推定かをはっきりと区別するのが難しいこともあるんだ。だから、学校のテストや問題集では、選択肢が『伝聞・推定』とセットになっていることも多いよ。まずは『終止形についていたら、伝聞か推定のどちらかだな』と判断できるようになることが第一歩だね」
「そうか、セットで覚えておけば安心ですね。でも、先生。さっき言っていた『接続で見分ける』っていうルールなんですけど、動詞によっては連体形と終止形が全く同じ形のやつもありますよね。例えば、さっきの『書く』だって、終止形も『書く』だし、連体形も『書く』です。これだと『書くなり』って書かれていたら、どっちの『なり』なのかわからなくなりませんか」
「おっと、ミライくん、鋭いところを突いてきたね。まさにそこが、多くの受験生が苦労する最大の難所なんだ。形が同じで見分けがつかないときは、どうすればいいと思う」
「うーん、前後の文章の意味をよく考えて、無理やり当てはめるしかないんでしょうか」
「それも一つの手だけど、もっと確実で、誰でも機械的に見分けられる方法があるんだ。実は、形が同じ言葉でも、ある特定の言葉に変えてみることで、正体がはっきりあぶり出されるんだよ。その実験台としてぴったりなのが、カ行変格活用という特別な動きをする『来』という動詞や、サ行変格活用の『す』という動詞なんだ」
「実験ですか。どうやるんですか」
「例えば、文章の中に『行くなり(いくなり)』という言葉があって、これが断定か推定か迷ったとする。この『行く』という動詞を、頭の中で無理やり『来(く)』に変えてみるんだ。もし、その場所が『断定』の意味、つまり連体形になるべき場所だったら、『来』の連体形は『来る(くる)』だから、『来るなり』になるはずだよね」
「あ、なるほど。もし『伝聞・推定』の意味、つまり終止形になるべき場所だったらどうなりますか」
「『来』の終止形は『来(く)』だから、『くなり』になるんだ。どうだい。『くるなり』になるか、『くなり』になるかで、はっきりと形が変わるだろう。迷ったら、頭の中で別の動詞に変えてみて、しっくりくる方を確かめる。これが形が同じ動詞に出会ったときの必殺技なんだよ」
「すごい。これなら意味で悩まなくても、言葉の形で一発で見分けられますね。なんだか裏技みたいで面白いです」
「気に入ってもらえてよかったよ。じゃあ、ここでちょっとしたクイズを出してみよう。古文の有名な物語の冒頭に、こんな一節があるんだ。『男もすなる日記といふものを、女もしてみむとて、するなり』。ここには『なり』が二回出てくるね。それぞれ、どっちの『なり』か分かるかな」
「ええと、一回目は『すなる』の『な』ですよね。これって『なり』の形が変わったものですか」
「その通り。よく気づいたね。『なり』の後に『る』がついているように見えるけれど、これは『なり』の連体形が『なる』なんだ。じゃあ、その上にある『す』に注目してみてごらん」
「『す』は、サ行変格活用の動詞ですよね。ええと、確か『す』の終止形は『す』で、連体形は『する』だった気がします。ということは、上にあるのは『す』だから、終止形です。終止形につくのは、二番目のグループの『伝聞・推定』ですね」
「大正解。素晴らしいよ、ミライくん。だから一回目の『すなる』は、『男の人が書くという、噂に聞く日記というものを』という風に、伝聞の意味で訳すんだ。じゃあ、二回目の一番最後にある『するなり』はどうだろう」
「最後は『するなり』ですね。上にあるのは『する』だから、これは連体形です。連体形につくのは、最初のグループの『断定』ですね。だから『私も書いてみようと思って、書くのである』みたいに、はっきりと言い切る意味になります」
「完璧だね。これでミライくんは、古文の教科書に出てくる有名な一節を、自分の力で見分けることができたんだよ。どうだい、自信が湧いてきたかな」
「はい。あんなに難しそうに見えた文が、上の言葉の形を見るだけで、あっさりと見分けられました。なんだか霧が晴れたみたいです」
「それはよかった。でもね、実は『なり』には、もう一つだけ、これまでの二つのグループとは全く違う、隠れた正体があるんだ。これを最後にお話ししておこう」
「ええっ、まだあるんですか。もうお腹いっぱいです」
「ハハハ、大丈夫、これは全然難しくないから。これまでは『助動詞』の『なり』を勉強してきたけれど、実は古文には、単語の一部として『〜なり』という形を持っている『形容動詞』という言葉のグループもあるんだ。例えば、現代語でも『静かだ』とか『綺麗だ』って言うよね。これを古文では『静かなり』『綺麗なり』と言うんだよ」
「あ、それなら現代語の『〜だ』と同じだから、馴染みがありますね。でも、助動詞の『なり』と混ざっちゃいませんか」
「そこが心配だよね。でも、見分け方はとてもシンプルんだ。形容動詞の『なり』は、それ自体が『静か』とか『綺麗』という、状態や様子を表す言葉とセットになって、一つの単語を作っているんだ。だから、上の言葉だけを切り離して『とても静かだ』と言えるように、言葉のニュアンスが繋がっている。一方で、さっきの断定の『なり』は、名詞の『学生』にポンと後からくっついたものだから、全く別物なんだ」
「なるほど。単語の終わりの部分がたまたま『なり』になっているだけで、言葉の意味自体が状態を表していれば、それは形容動詞なんですね」
「その通り。これで『なり』に関する大きな壁は、すべて乗り越えたことになるよ。どうだったかな、ミライくん」
「最初は意味がたくさんあってパニックになりそうでしたけど、上の言葉が体言か連体形なら『断定』、終止形なら『伝聞・推定』っていうルールが分かったので、これからは迷わずに解けそうです。動詞の形が同じときの変身技も、忘れないようにします」
「素晴らしい。その意気だよ。古文は一見すると遠い昔の謎の言葉に見えるけれど、こうしてルールを一つずつ紐解いていけば、現代の私たちが使っている言葉と地続きになっていることがよく分かるんだ。これからもこの調子で、楽しく古典の世界を冒険していこうね」
「はい、ありがとうございました。今日の夜の勉強で、さっそく問題集の『なり』のページを解き直してみます」
嬉しそうにノートを閉じるミライくんの姿を見送りながら、言葉の仕組みを理解することの大切さを改めて実感します。古文の文法は、決して私たちを苦しめるための意地悪な規則ではありません。何百年も前の人々が、自分の気持ちや見た景色、耳にした噂話を、できるだけ正確に、そして豊かに伝えるために磨き上げてきた知恵の結晶なのです。
それでは、ここまで佐藤先生とミライくんが繰り広げてきた解説の内容を、すっきりと整理して、誰でも一目で理解できるようにまとめてみましょう。
📝 古文の助動詞「なり」の識別における結論
古文における「なり」を見分けるための最も確実な基準は、その「なり」のすぐ上にある言葉の形、すなわち接続を確認することです。「なり」の正体は、大きく以下の二つのグループに分類されます。
第一グループ:断定・存在の助動詞「なり」
上の言葉が「体言(名詞)」、または活用語の「連体形」である場合、その「なり」は断定、あるいは存在の意味になります。
- 主な意味と訳し方:断定は「〜だ、〜である」と訳し、事物の正体をはっきりと言い切ります。存在は、上が場所を表す言葉の場合に「〜にある、〜にいる」と訳します。
- 見分け方の基準:カチッとした名詞の塊、あるいは「とき」「こと」に繋がる形の下にくっついている点に注目します。
第二グループ:伝聞・推定の助動詞「なり」
上の言葉が活用語の「終止形」である場合、その「なり」は伝聞、あるいは推定の意味になります。ただし、上がラ行変格活用型の言葉である場合のみ、例外として「連体形」にくっつきます。
- 主な意味と訳し方:伝聞は、人から聞いた話として「〜ということだ、〜そうだ」と訳します。推定は、特に耳で聞いた音や声を根拠にして「〜のようだ、〜らしい」と訳します。
- 見分け方の基準:言い切りの形の下にくっついている点に注目します。
活用形が同じで判断に迷う場合の対処法
動詞の種類によっては、四段活用のように「終止形」と「連体形」が全く同じ形になるものがあります。このため、文面だけではどちらのグループの「なり」なのか区別がつかない現象が起こります。その際は、以下の手順で機械的に識別を行います。
- 迷った箇所にある動詞を、頭の中でサ行変格活用の「す」や、カ行変格活用の「来(く)」に置き換えてみます。
- 置き換えた結果、「するなり(連体形プラスなり)」となって文章がしっくり通じる場合は、第一グループの「断定」です。
- 置き換えた結果、「すなり(終止形プラスなり)」、あるいは「くなり(終止形プラスなり)」となって文章がしっくり通じる場合は、第二グループの「伝聞・推定」です。
補足:形容動詞の活用語尾としての「なり」
上記二つの助動詞とは別に、単語そのものの終わりの形が「なり」で終わる言葉があります。これは「静かなり」「哀れなり」のように、状態や様子を表す言葉の体裁そのものが変化した「形容動詞」という単語の一部です。
直前に名詞や動詞が単独で存在するのではなく、「なり」を含めた全体で一つの状態を表す形容詞のような意味合いを持っている場合は、助動詞ではなく形容動詞であると判断します。
このように、古文の「なり」は、単語そのものの意味を闇雲に当てはめようとするのではなく、まずは「上がどの形になっているか」を視覚的に捉え、必要に応じて別の動詞に置き換える実験を行うことで、誰でも迷うことなく、正確に見分けることができるようになります。この基本の型を身につけておくことが、古典の読解力を高めるための最も確実な近道です。
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